はじめに
資産形成を発信しているYouTuberさんの動画を見て勉強しているとみなさん新NISAを夫婦で最短で満額利用できる資金があり、毎年株式投資で損はないと思えます。ただ、私は昨年損失を出したので繰越控除を考えなければいけませんし、妻の口座にも私の資金を移して新NISAを利用する予定です。
今回はそんな状況の私が新NISAの戦略を考えた際に注意した税金や控除の制度ついて書かせていただきます。これから新NISAの利用を考えている方は新NISA口座に現在持っている株式を移す際の参考になると思いますのでぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
新NISA満額1,800万円の資金を持っていないサラリーマン投資家の投資戦略
新NISAでの利益を最大化するための税金と控除、制度の考え方
- 総合課税と申告分離課税
- 損益通算と繰越控除
- 配当所得控除
- 外国税額控除
- 贈与税
納税方法(総合課税と申告分離課税)を知る
株式投資の利益は株式の売却で得られる譲渡益と配当金の2つになります。この2つの利益を2つのどちらかの課税方法で確定申告します。まず、1つ目が総合課税。これは株式の所得を他の所得と合算して課税所得を計算する方法です。サラリーマンの私で言えば給与所得と株式からの所得を合算して課税所得とすることになります。総合課税の税率は以下の表のように決まっています。
次に申告分離課税です。こちらは他の所得と合算せず、所得税を決定する方法で、譲渡益のみを所得と考え所得税を決定するといったイメージとなります。株式の利益には20%(復興特別支援税を除く)の税率と決まっています。
株式投資では譲渡益(売却益)と配当金に税金がかかる
譲渡益は申告分離課税で損益通算・繰越控除を利用する
譲渡益は個人投資家のであれば、申告分離課税での申告となります。そのため、損益通算と繰越控除ができます。損益通算を簡単に説明すると、「同じ年の利益と損失を合算できる。」ということです。これは利益と損失と合算することで利益が小さくなるので所得税が削減できるメリットがあります。損益通算をした際に損失の方が利益より大きい場合、確定申告をすることで最大3年分の利益を損失と合算できる制度を繰越控除と言います。
配当金は総合課税か申告分離課税を選んで、申請する
配当金にかかる税金は総合課税か申告分離課税(または申告しない)で変わるので表にまとめます。下の表から総合課税にすると住民税が10%と申告分離課税と比較して大きくなっていることがわかります。そのため、所得税5-45%と設定されている所得によって総合課税で得をする人、損をする人がでます。
総合課税 | 申告分離課税 | |
---|---|---|
所得税 | 5-45 | 15 |
住民税 | 10 | 5 |
合計 | 25 | 20 |
総合課税、申告分離課税それぞれで異なる控除や制度が利用可能なので次からどちらの課税方法が適切なのかを検討していきます。
総合課税では、配当控除が利用できる
総合課税の場合のみ利用できる日本国内の法人から得た配当金の一部を取り戻せる制度です。総所得1,000万円までは所得税10%、住民税2.8%。1,000万円超になるとそれぞれ半分になり所得税5%、住民税1.4%が控除になります。
所得税と住民税から配当控除を加味した税率を表にまとめます。配当控除後の税率を見ると695万円超の所得のある方は税率が20%を超えているため、総合課税にすると税金を多く取られることがわかります。そのため、配当控除で得をするためには総所得を695万円以下にする必要があります。また、FIREした後は所得が下がるので配当控除のメリットは大きくなることがわかります。
課税される所得金額 | 所得税(%) | 所得税に対する配当控除(%) | 所得税の賞味税率(%) | 住民税(%) | 住民税に対する配当控除(%) | 住民税の賞味税率(%) | 配当控除後の税率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
195万円以下 | 5 | 10 | 0 | 10 | 2.8 | 7.2 | 7.2 |
195-330万円以下 | 10 | 10 | 0 | 10 | 2.8 | 7.2 | 7.2 |
330-695万円以下 | 20 | 10 | 10 | 10 | 2.8 | 7.2 | 17.2 |
695-900万円以下 | 23 | 10 | 13 | 10 | 2.8 | 7.2 | 20.2 |
900-1,000万円以下 | 33 | 5 | 28 | 10 | 2.8 | 7.2 | 35.2 |
1,000-1,800万円以下 | 33 | 5 | 28 | 10 | 1.4 | 8.6 | 36.6 |
1,800-4,000万円以下 | 40 | 5 | 35 | 10 | 1.4 | 8.6 | 43.6 |
4,000万円超 | 45 | 5 | 40 | 10 | 1.4 | 8.6 | 48.6 |
申告分離課税では、損益通算と繰越控除が利用できる
配当金を申告分離課税で申請した場合は、譲渡益と全く同じ扱いとなります。そのため税率は所得税15%、住民税5%の20%です。
- 譲渡益は申告分離課税で損益通算・繰越控除が利用できる
- 配当金で総合課税を選んだ場合は配当控除が利用できる
- 総所得695万円以下の場合は配当控除がお得
- 配当控除の対象は日本国内の法人からの配当金(米国株は対象外)
- 配当金で申告分離課税を選んだ場合は譲渡税と同じ扱い
外国税額控除で外国税を取り戻す
外国税額控除の計算方法
外国税額控除とは、2カ国で税金が発生した際に外国で発生した税金を一定の範囲で控除することを言います。つまり通常米国株では米国で10%、日本で20%の税金がかかります。そのうち、米国での10%の一部を取り返すことができるということです。総合課税、申告分離課税どちらの場合も申告でき、以下の計算式で算出されます。
- 所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
その年分の所得税額は控除などを適用した後のもの、逆にその年分の調整国外所得金額と所得総額は控除前の金額となります。つまり、米国株からの配当金があった場合、その年分の調整国外所得金額では損益通算や繰越控除前の金額が適用され、損益通算とは関係なく外国税額控除も受けられると解釈できます。
総合課税と申告分離課税での違いはその年分の所得税額になります。総合課税にすると配当金も所得に含まれるため、所得税額が申告分離課税より大きくなります。また、返還されなかった外国税は控除超過額として3年間繰り越すことができます。
具体例
私の場合は所得税額が43万円程、総所得が600万円程、米国株からの配当金が7万円程だったので
- 所得税の控除限度額=43×7/600=0.5(万円)
となります。元々は7万円の10%、7,000円が税金として取られているので5,000円が変換される。また、返還されなかった2,000円は控除超過額として3年間繰り越すことができます。
実際に計算するとわかりますが、こちらは配当控除と比較して控除限度額が小さいことがわかります。ただ、総合課税・申告分離課税どちらでも必ず控除できるので必ず利用したいと思います。
引用: No.1240 居住者に係る外国税額控除
- 外国税額控除は総合課税、申告分離課税どちらでも申告可能
- 課税方法により金額は異なる
- 控除超過額は3年間繰り越すことができる
年間110万円以上の資金移動は贈与税に注意
贈与税の計算方法
贈与税とは財産をもらったときにかかる税金です。今回は現金の話をしますが、貴金属や不動産なども対象となります。贈与税は他人だけでなく夫婦を含む親族にもかかり、受け取った方が税金を支払います。
贈与税は110万円の基礎控除があり、
- 課税額=贈与額-基礎控除学(110万円)
で計算した後、速算表で税額を見積もることができます。速算表は
- 一般贈与財産用→ 兄弟間、夫婦間、親から子への贈与で子が未成年者の場合
- 特別贈与財産用→ 贈与により財産を取得した者(18歳以上)が直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した場合
に分かれます。それぞれの速算表を下に示します。ここから夫婦間の110万円を超える移動には最低10%の贈与税がかかることがわかります。
基礎控除後の課税価格 | 税率(%) | 控除額 (万円) |
---|---|---|
200万円以下 | 10 | – |
300万円以下 | 15 | 10 |
400万円以下 | 20 | 25 |
600万円以下 | 30 | 65 |
1,000万円以下 | 40 | 125 |
1,500万円以下 | 45 | 175 |
3,000万円以下 | 50 | 250 |
3,000万円超 | 55 | 400 |
基礎控除後の課税価格 | 税率(%) | 控除額 (万円) |
---|---|---|
200万円以下 | 10 | – |
300万円以下 | 15 | 10 |
400万円以下 | 20 | 30 |
600万円以下 | 30 | 90 |
1,000万円以下 | 40 | 190 |
1,500万円以下 | 45 | 260 |
3,000万円以下 | 50 | 415 |
3,000万円超 | 55 | 640 |
国税庁No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)参照
新NISAでは110万円の資金移動を目標に
110万円を超えると夫婦でも贈与税の対象となることがわかります。そして、110万円を超えると最低10%の税金をかかることがわかります。
このため、
- 税金を避けるために 1年間の資金移動を110万円以下にして
- 贈与税を納めて、資金移動して
新NISAを運用するという2つの選択肢があります。基礎控除を除いて200万円以下になる310万円の贈与を行なうと10%の贈与税、20万円となります。また、満額の360万円を資金移動した場合も税額は
(360-110)×15%-10(万円)=27.5(万円)
となります。ここで、この310万円を長期で成長率4%でインデックス投資すると仮定します。アセットマネジメントOneシミュレーションを利用して計算すると2年で335万円と20万円以上の利益が出て、その後はさらに複利の効果で利益が膨らんでいきます(下表を参照)。そのため、贈与税を払ってでも最短で新NISAの枠を埋めるのも効率的といえます。
運用利回り | 4% |
初期投資 | 310万円 |
毎月の積立 | 0万円 |
積立期間 | 2年 |
結論、私は資金移動しても夫婦で3,600万円を5年で満額投資できるわけではないので無理に贈与税を支払って生活を圧迫しないようにしたいと考えています。ただなるべく早く新NISAの枠を埋めたいので毎年110万円を移動する計画にしています。
- 夫婦間も110万円の資金が移動すると贈与税の対象となる可能性がある
- 贈与税を支払ってでも新NISAを埋めるのは効率的である
- 私は資金に余裕がないので毎年110万円の資金移動を目標にする
【新NISA】2つの方針
譲渡益は繰越控除を利用して新NISAに移行、配当金は配当控除と外国税額控除を利用する
昨年の損失が30万円程ある私は繰越控除と外国税額控除を利用して、新NISAに資金を移していくのが税金を払わない方法となります。また、配当金を申告分離課税で申告しなくても現在持っている日本株と米国株で繰越控除を使い切れるので、配当金は総合課税で配当控除を利用したいと考えています。もちろん外国税額控除は必ず使います。
満額投資後は米国ETFで新NISAを埋める
新NISAは日本株は非課税、米国株は外国税10%
新NISAでの配当金は国内課税はかかりませんが、米国での10%は確実にかかります。そのため、新NISAを満額埋めた後に投資を継続した場合の税率は以下のようになります。
日本株税率(%) | 備考 | 米国株税率(%) | 備考 | |
---|---|---|---|---|
特定口座 | 20 | 配当控除 | 28 | 外国税額控除 |
新NISA | 0 | – | 10 | – |
この表を見ると米国株の税率28%が1番大きく、外国税額控除の上限も低いことから米国株で新NISAを利用するのが1番税率が低くなると考えます。ただ、これはあくまで夫婦で3,600万円の満額を埋めた後の話なのでまず、満額埋めれるように努力します。
- 繰越控除と配当控除、外国税額控除を利用しながら、特定口座の株式を新NISAに移動する
- 新NISAに満額投資した後に税率を最低にするよう資産を移動する
まとめ
今回は株で損失がある、夫婦間で資金移動する際の注意点をまとめました。この検討をもとに実際にたてた戦略を下の記事でまとめていますので、そちらも見ていただければと思います。